第75話「置き土産」

流産した次の日は、ユウがストレスからか高熱を出し、今度は私がユウの看病。妊娠してる間より体調は良くなったから別に体力的には問題なかったんだけど、、、まさかの胸になんか発見。悲しむ暇を与えておくれよ…。

第76話「なんかごめん」

流産からの乳がん疑惑だなんて…。流石にこの時ばかりは、ポジティブな私でも、私なんかと結婚しなければ…と思ってしまいました。

第77話「私死なないよね?」

この時、リアルタイムで妊娠と流産を知らせたのは、妹と婦人科医の友達夫婦、そしてウエディングドレスを作ってくれていたデザイナーの恩師(デザイン変更の可能性を伝える為)にだけでしたが、この乳がん疑惑については誰にも言えませんでした。結婚したばかりなのに、さっき子供を失ったばかりなのに、次は自分が死ぬかもだなんて…言えるわけがありません。

第78話「追い討ち」

ショーツになら慣れてるけど、ブラジャーに血が着いてるとか、え? マジ? ってなりますよ。でも、しこりを見つけた時より、血を見た時の方が意外と冷静だったというか、これは本当にヤバい(死ぬ)かもって思ったら、本気でユウや自分の家族の事を可哀想だと思いました。だって死んだ後は私は痛くも痒くもないのに、彼らはその後もずっと苦しいから。そう思えるから、私はいじめにあった時もダイチくんに裏切られた時も「生きる」という選択ができたんだけど、病気だけは自分でコントロールできないし、もしこれが死に繋がる事になったら悲しませてしまう家族や友達に申し訳ないと思いました。書き忘れてましたがそういえば、「がん保険には入ってるから治療費には困らないかな」とかも考えてました。意外と現実的なことばかり考えて、ドラマみたいに一人で泣き叫んだりはしないもんなんですね。

第79話「検査結果」

「母乳」というセリフの破壊力よ! 産んで無いのに!! と、凄い衝撃を受けました。その後、乳首からの分泌は数ヶ月続き、洗ってもシミになって落ちないので何度もブラジャーを買い替えました。今考えたら、そういう時用のパッドか何か使えば良かったのでしょうが、妊娠しているわけでもちゃんと母乳が出るわけでもないので、そういうものがあるとう事を知る余地もなく、ただただ止まるのを待ちました。出産もしていないし子供もいないのに、体だけは母親になるなんて。何の為にもならないし誰にも伝わらないし、すごく無駄な事をしていた私の体。そのことを思うと、今でも泣けます。ここで最も私が伝えたいのは「妊娠」はするだけでリスクがあるということです。しかも、女性の体にだけ一生消えない後が残るのです。そんな事、今まで誰も私に教えてくれませんでした。妊娠しても子供が産まれてこなければそれで終わりなのだと思っていました。大好きな人と結婚した後でさえこんなにも辛いのだから、そうでない方の辛さは計り知れません。だから、女の子に生理が来る頃、恋愛が楽しくなる中高生、自由になる20代、何度でもこの事を男女全員に知らせて、悲しい思いをする女の子を減らしたい。だから、この漫画は若い子には面白くないと思いますが、本当は10代、20代にも読んでもらいたい。恋愛漫画は付き合ったり結婚したら終わるけど、現実は色んなことがあるんだと。

第80話「出来たけどいない その後①」

嫌な事言ってくる人、大抵地元のおじさん説。色々言われて来たけど、これが一番キモくて心から軽蔑したセリフ。ところで、この人の様に「30過ぎて焦り出す」と不妊治療や妊活している人をバカにする様な発言をする方が知人の中に何人かいるのですが(どちらも子供が複数いる男性)、この人たちは、もしかしたら自分の妻は別に自分と一生添い遂げたいと思った訳じゃないけど子供が欲しいから確実に産める時期にとりあえず結婚して子供を産んで心の中ではいつか必ず別れてやるとか、別の人に恋してるかも、とは微塵も思わないのだろうか…。自分の子供を産んでくれたからって、それは貴方を愛しているとイコールではない事もあるのに。と、意地悪言い返したくなるくらい、ムカついた。まぁ、こういう心無い台詞を吐く人は、そういう自分の妻のことを賢いと思うのかもしれないけど。女性が適齢期に結婚や出産を考えられるかどうかは、キャリアや社会的な問題だけじゃなくて、この人だと思える人に出会えるかどうかもかなり大きいですよね。

第81話「お母さんの気持ち その後②」

結局、披露宴でお手紙読む事になったんです。ユウ(新郎)だけ読むのはおかしいからって。日本で披露宴を行った日は、私の誕生日の前日の母の誕生日でした。38年前のこの日、母は3回の流産を乗り越えて私が産まれて来るのを今か今かと待っていたのです。そう思ったら、まともに手紙が読めませんでした(笑) 子供を産み育てていないのに母の気持ちがわかったなんて言ったらおこがましいけど、私は産まれて来なかった子供のことを今でも大事に思っているのだから、そりゃ〜この世に生きている私のことを何としてでも幸せにしたいと思うわよね(笑) 愛されて育って、自分の納得する生き方を見つけらて、私はちゃんと幸せです! 心から、生んでくれてありがとう。

第82話「奇跡 その後③」

流産した時、無事に産まれて来るかわからない時期に名前を考えるべきではなかったなと、少し後悔していました(物は買ってなかったので良かった)。でも、その後ユウの弟が結婚して「愛ちゃん」が家族になると知ってびっくり&勝手に二人で大盛り上がり! 愛ちゃんは初対面のご挨拶の時すごく緊張していたのですが、私たちは「特殊格だよ!超運の良い名前になったんだよ!」と言いたくてニヤニヤ、ソワソワ(笑) 愛ちゃんが家族になってくれたお陰で、私たちの後悔が楽しくて幸せな思い出になりました。本当に奇跡的! 愛ちゃん、家族になってくれてありがとう。

第83話「世間とは その後④」

流産が私に残したものは、痛みの記憶と死への恐怖でした。あんなことがあったのにそれでも子供が欲しいって事は私の死を望んでいるのかと、泣きながらユウに言ったこともありました。38歳で流産してから去年44歳になる瞬間までの6年間、結婚生活の中で唯一、妊活が精神的に本当に辛かったです。けど、結婚前に私が言った「不妊治療はしたくない」という言葉をユウが尊重してくれたから、二人の関係を壊す事なく乗り越えられたのかなと思います。

今、私は叔母として、ユウはサッカーのコーチとして、誰かの「子育て」に関わりながら自分のキャリア活動に没頭して幸せに暮らしています。でも、もし私が若い時に、家事や育児をしっかり分担して育児の為に一緒に仕事をセーブすると言ってくれるユウの様な男性に出会い、それを受け入れてサポートしてくれる様な社会だったら、私も自然と子供を望んでいたかもしれません(これを言うと、そうだったら結婚相手は俺じゃなかったからこれで良かったとユウは言ってくれますが(笑))。

既婚未婚、子あり子なし、働いているいない関係なく、私たちは子供の未来に関わっています。そう思うから、子供達が大きくなる頃には少しだけ生きやすい世の中になっている事を祈ってこのエピソードを書きました。そして、どんな環境の「母親」も、母にならない・なれない女性も、一方的に責められる事がなくなりますように。